大判例

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高松高等裁判所 昭和25年(う)403号 判決

松山地方検察庁検事正の控訴趣意(第一、二、三点)並弁護人の右趣意に対する答弁について。

原判決が被告人に恐喝及暴行の犯意を認めることができないとの理由で無罪を言渡したことは検察官所論の通りであるが控訴理由を検討するためそれに関する原審の審理の経過を調べると (イ)被告人は原審公判延において警察や検察庁では清水通平等を脅かしたとか高橋常吉を毆つたとか述べておるがそれは嘘ですと弁解し(記録一九丁)それは警察では三日三晩否認し続けたが刑事が白状しなかつたら帰してやらぬと云うので帰りたいため刑事の云うことに同調し、検察庁でも同様に思うて警察の通り述べた(記録五九丁)と陳弁したところ検察官から被告人は昭和二四年一一月一四日逮捕されたもので暴行の点の供述調書は翌一五日作成され恐喝の点の供述調書も一六日に作成されており何れにも被告人の署名押印があるので陳弁が事実に副はない虚構のものである(記録五九丁)と反駁されると被告人は忽ち三日三晩否認し続けたと云うのは云い過ぎである相当頑張つたが一五日午前二時頃暴行の点を認めたけれど検察庁に送致されるまで恐喝の点は否認していたのだと訂正し(記録六〇丁裏)たこと、しかしながら警察における一六日付作成の供述調書で恐喝の点を認めており又一八日勾留状を執行され帰宅ができないことになつた後の同月二五日検察庁においても自白しておること、(ロ)検察官が被告人の犯行であること及叙上被告人の弁解に対する証明力を争うため被告人の警察並検察庁における供述調書の取調並該供述調書の任意性を証明するため司法警察員及検察事務官を証人として取調べを請求し(記録一八丁裏、五九丁裏―六〇丁)、たこと並それについて被告人及弁護人は該供述書の取調べに異議がないと陳述しそれにより裁判官は、刑訴法第三二六条第一項の所謂同意があつたものと認めて該調書の取調をする決定をし取調べられておること、(記録六〇丁裏)(ハ)該供述調書には何れも被告人の署名拇印があつて恐喝暴行について被告人に不利益な事実を承認した所謂自白の記載があることを窺うことができるものであることが認められる、これ等の諸情況を鑑みると右被告人の警察及検察庁における供述調書を任意性に疑があると認め証拠に採用しないのは聊か経験則に反する盲断で早計に過ぎる疑がある、ばかりでなく任意性の疑があるならば、その点を立証趣旨とする検察官請求の前記証人司法警察員及検察事務官の取調べをしなければならないにかかわらずそれをせず(証拠調をしてないので証拠能力はないが同人等を当審で取調べた結果によると任意性が窺はれ得るように思はれる)即ち検察官の立証を尽させずして漫然該供述調書を採用しなかつた疑もある、次ぎに所論各証人の供述並それにより窺知できるその場の情況、言動等と被告人の原審公判廷における供述とを綜合通観すると、答弁書記載の如き諸事情は却つて信用が措けないところである又被告人が正当な交渉乃至は権利行使を意図しての言動ではなく従つて犯意を含めて恐喝、暴行の事実を認め得られるのではないかと疑はれるものもある、それ故原判決には審理を尽さなかつた結果証拠の採否を誤るか又は証拠の採否、判断を誤る等訴訟手続に法令の違反があり惹いては事実の認定を誤るに至り遂に無罪を言渡した疑があるから検察官の控訴は理由があり原判決は破棄を免かれない。

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